妊活中に知っておきたい睡眠時無呼吸症候群と不妊の関係

Cocobaby 編集部
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Cocobaby編集部 (監修・コメント 松田和洋先生

「いびきがうるさい」「寝ても疲れが取れない」——その症状、妊活の土台を崩しているかもしれません。睡眠の問題が妊娠しやすさに及ぼす影響を、女性・男性それぞれの視点から整理します。

妊活中、多くの方が「ホルモンバランス」「栄養」「体重管理」に目を向けます。しかし、毎晩の睡眠の質についてはどうでしょうか。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、気づかないうちに体の内側でさまざまな悪影響をもたらしている可能性があります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と不妊の関係を、現時点でわかっていることと、まだ研究途上の部分を区別しながら丁寧に解説します。

睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

「いびきが気になる」 「寝ても疲れが取れない」 「日中とにかく眠い」

こうした症状がある方の中には、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)が隠れていることがあります。

眠っている間に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気で、代表的なタイプは閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)です。のどの空気の通り道が狭くなることで起こり、本人は気づかないまま夜中に何十回、何百回と呼吸が乱れているケースもあります。[7]

「いびきや眠気くらい」と感じるかもしれませんが、睡眠中の低酸素状態が繰り返されることで、代謝・ホルモン・免疫・循環器など、体全体に影響が及ぶことが知られています。[8]

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睡眠時無呼吸が妊活に関係すると考えられている理由

睡眠時無呼吸がある場合、眠っている間に繰り返し酸素が不足し、睡眠の質も低下します。その結果、体の中では次のような変化が起きやすくなると考えられています。[1][2]

慢性的な炎症・酸化ストレスの増加卵子・精子の質に悪影響を及ぼす可能性
インスリン抵抗性の悪化血糖コントロールの乱れ、PCOS悪化リスク
ホルモンバランスの乱れ(LH・FSH・テストステロン等)排卵障害、精子形成の低下
自律神経・交感神経の亢進生殖機能への間接的な悪影響

重要なポイント
現時点では、睡眠時無呼吸症候群が「単独で不妊を引き起こす主犯」と断言できる段階にはありません。

しかし、妊活の土台を崩す「見逃されやすい要因」になりうることは、複数の研究が示唆しています。サプリや治療だけを積み重ねても、土台が整わないままでは効果が安定しないことがあります。

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女性における睡眠時無呼吸と妊娠しやすさの関

PCOSとの深いつながり

女性では特に、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)との関係がよく知られています。2023年に更新された国際PCOSガイドラインでは、PCOSのある女性はBMIとは無関係に睡眠時無呼吸の頻度が高いことが示されており、いびき・日中の眠気・朝の強い疲労感がある場合は、必要に応じてスクリーニング評価が推奨されています。[1]

PCOSをお持ちの方へ
 PCOSと診断されている方は、「肥満でないから大丈夫」とは言い切れません。

BMIが標準範囲内であっても睡眠時無呼吸が見られることがあるため、症状がある場合は担当医に相談してみましょう。

不妊治療中の女性での報告

不妊治療中の女性を対象にした研究では、睡眠時無呼吸のリスクが高い方ほど、他の健康問題や高BMIを伴いやすいことが報告されています。[2]

また、データはまだ限られているものの、流産との関連(調整オッズ比 6.17)を示唆する研究もあります。[4]

睡眠の質と不妊治療成績

近年の研究では、OSAが不妊症のリスクを約2.1倍高める可能性や、体外受精(IVF)の臨床的妊娠率および生児獲得率を低下させる独立した因子であることが報告されています。[2][3]

ただし、この分野はまだ研究が進んでいる途中であり、すべての人に同じように当てはまるわけではありません。

大切なのは、必要以上に不安になるのではなく、「思い当たる症状があるなら見逃さない」という姿勢です。

症状があるのに「疲れているだけ」と放置するのが、最も避けたいことです。
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男性における睡眠時無呼吸と妊活への影響

妊活というと女性側ばかりに意識が向きがちですが、男性の睡眠の質やいびきも決して無視できません。

研究では、OSAのある男性においてAHI(無呼吸低呼吸指数)の悪化に伴い精子濃度・運動率が段階的に低下することが報告されています。

テストステロンについては有意な低下傾向は見られるものの、現時点では統計的に有意な相関は確認されていません。[5]

  精子・生殖機能への影響 精子濃度・運動率の低下(AHIと有意に相関)男性不妊リスクの上昇酸化ストレスによる精子DNAへの影響  ホルモン・性機能への影響 テストステロン:低下傾向あり(統計的有意差は未確立)勃起機能障害(ED)リスクの上昇性欲の低下

特に以下のような症状がある男性は、睡眠の問題も疑ってみることが合理的です。

  • いびきが大きい
  • 日中の眠気が強い
  • 体重が最近増えてきた
  • 性欲低下や勃起の悩みがある

こんな症状があれば要注意

次のような症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。「年齢のせい」「疲れているだけ」と片づけずに、一度立ち止まって考えてみてください。

  • 大きないびきをかく
  • 寝ている間に呼吸が止まっていると家族に言われたことがある
  • 朝起きても疲れが取れていない
  • 日中に強い眠気がある
  • 起床時に頭痛がある
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 夜間に何度もトイレに行く
  • 集中力が続かない
妊活中は「不調を我慢」しないことが大切です。
 不調を放置したまま治療だけ続けても、妊娠しやすい体の土台は整いません。症状があるなら、早めに専門家に相談することをお勧めします。
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特に注意したい方

睡眠時無呼吸は「単なる睡眠の問題」ではなく、代謝やホルモンの問題とセットで起きやすい疾患です。以下に当てはまる方は、妊活の観点からもチェックしておく価値があります。

  • 肥満がある(BMI 25以上)
  • PCOSと診断されている
  • 血糖値が高め・糖尿病予備群と言われている
  • 高血圧がある
  • 首が太い、またはあごが小さい
  • 男性で EDや性欲低下がある
  • 家族からいびきを指摘されている

検査・治療をすると妊娠しやすくなるの?

ここは正直にお伝えします。現時点では、「睡眠時無呼吸を治療すれば妊娠率がはっきり上がる」と断言できる段階にはありません。研究は進んでいますが、そこまで強い結論はまだ出ていないのが実情です。

ただし、睡眠時無呼吸の治療によって期待できることはあります。

  • 日中の眠気・疲労感の改善
  • 生活の質(QOL)の向上
  • 血圧・血糖コントロールの改善
  • 性機能・テストステロンの改善
  • 体調全体の底上げ
治療の意味は「魔法のように妊娠率を上げること」ではなく、妊娠しやすい土台を整えることにあります。土台が整えば、他の治療やケアの効果も発揮されやすくなります。
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受診の目安

次のいずれかに当てはまる場合は、主治医やかかりつけ医に相談してみてください。

  • 妊活中で、強いいびきや日中の眠気がある
  • PCOSや肥満があり、睡眠の質も悪い
  • 男性不妊の検査中で、いびき・眠気・EDがある
  • 不妊治療を続けているのに、体調不良や強い疲労感が続く
  • 家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と言われる

必要に応じて、簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)につながることがあります。

最近は自宅で行える検査キットも使われるようになっており、入院不要で調べられる場合があります。まずは「相談してみる」の一歩が重要です。

今日からできること

睡眠時無呼吸が疑われる場合、自己判断だけで終わらせず、まずは医療機関への相談が大切です。そのうえで、日常生活でできることとして以下が役立ちます。

  • 体重管理を意識する——肥満は睡眠時無呼吸の最大のリスク因子のひとつです
  • 飲酒を控えめにする——アルコールはのどの筋肉を弛緩させ、無呼吸を悪化させます
  • 寝る前の過食を避ける
  • 仰向けばかりで寝ない工夫をする——横向き寝で気道が確保しやすくなるケースがあります
  • 睡眠時間を削りすぎない——睡眠の量と質はセットで大切です
  • いびきや眠気を軽く考えない
まとめ 睡眠時無呼吸症候群は、妊活中のすべての方が必ず心配すべき病気ではありません。しかし、いびき・眠気・疲れ・肥満・PCOS・男性の性機能低下がある場合は、見逃してはいけない可能性があります。 妊活が長引くと、サプリや検査項目を増やす方向に進みがちです。しかし実際には、「毎晩眠れているか」「呼吸が乱れていないか」という基本の部分が抜け落ちていることがあります。 遠回りに見えても、睡眠を整えることは体全体を整えることにつながります。妊活の土台である睡眠を、今一度見直してみてください。 この記事のポイント
 睡眠時無呼吸は「単独で不妊を起こす主犯」ではないが、ホルモン・代謝・炎症・ストレス反応を通じて妊活に不利な影響を与えうる。症状に心当たりがある場合は早めに専門家へ相談を。

参考文献・引用元

ガイドライン

1.  Teede HJ, et al. “Recommendations from the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome.” Human Reproduction / Fertility and Sterility, 2023. (2023年国際PCOSガイドライン ― PCOSとOSAのスクリーニング推奨を含む)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10505534/

女性不妊・体外受精(IVF)

1.  He Q, et al. “Obstructive sleep apnea increases risk of female infertility.” PLOS ONE, 2021.(OSAと女性不妊リスク:調整オッズ比 2.101)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8673645/

2.  Li et al. “Obstructive sleep apnea as a predictive indicator for in vitro fertilization outcomes in women with polycystic ovary syndrome.” Sleep and Breathing, 2025.(OSA合併PCOS患者でIVF妊娠率・生児獲得率が低下)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12238160/

流産・妊娠合併症

1.  Eisenberg E, et al. “Association of sleep-disordered breathing with early pregnancy loss.” PubMed ID: 36609819, 2023.(OSAと流産リスク:調整オッズ比 6.17)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36609819/

男性不妊・精子・性機能

1.  Zhang et al. “Association between obstructive sleep apnea and male reproductive function.” Frontiers in Endocrinology, 2025.(AHIと精子濃度・運動率・テストステロン・EDの関係)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12483905/

睡眠時無呼吸症候群 一般解説(日本語)

1.  日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン 2020」
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20200730145402.html

2.  厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html

3.  NHK健康チャンネル「睡眠時無呼吸症候群」
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1026.html

専門医コメント

松田ウイメンズクリニック院長 松田和洋先生

不妊治療というと、どうしてもホルモン値や卵子の質、精子の状態、治療方法そのものに目が向きがちです。

しかし私たち生殖医療に携わる立場から見ると、「妊娠しやすい体づくり」のためには、日々の生活習慣を整えることも同じくらい大切だと感じています。その中でも近年注目されているのが「睡眠」です。

睡眠時無呼吸症候群は、単にいびきをかく病気ではありません。

睡眠中に繰り返し呼吸が浅くなったり止まったりすることで、体は慢性的な酸素不足や睡眠不足の状態となり、ホルモンバランスや代謝機能、自律神経の働きに影響を及ぼします。

その結果として、排卵機能や精子形成、さらには妊娠しやすさにも関係している可能性があることが近年の研究で示されつつあります。

私自身も思い当たることがしばしばあり(不妊ではありませんが)、体調面で少々心配しているところではあります。

もちろん、睡眠時無呼吸症候群そのものが不妊の直接的な原因であると断定できるわけではありません。

しかし、妊活が長引いている方の中には、治療やサプリメントの見直しは行っていても、「睡眠」という大切な土台に問題が隠れているケースが少なからず存在します。

特に、強いいびきがある、日中の眠気が強い、朝起きても疲れが取れない、ご家族から呼吸が止まっていると言われたことがあるといった方は、一度睡眠の状態にも目を向けてみていただきたいと思います。

妊娠は、卵子や精子だけでなく、全身の健康状態の上に成り立っています。

食事や運動と同じように、質の良い睡眠も妊活を支える大切な要素の一つです。治療を頑張っているのになかなか結果につながらないときこそ、少し視点を変えて生活習慣を見直してみることが、新たな一歩につながるかもしれません。

ご自身だけでなく、ぜひパートナーの睡眠にも目を向けながら、ご夫婦で健康な体づくりに取り組んでいただければと思います。

松田 和洋 先生 プロフィール

松田和洋先生は鹿児島市で「松田ウイメンズクリニック」を運営する生殖医療専門医。

1982年に鹿児島大学医学部を卒業後、福岡徳洲会病院や鹿児島市立病院で研鑽を積み、1986〜1988年には米国ロマリンダ大学で研修を受け、高度生殖医療を習得されている。

2000年にクリニックを開設して以降、体外受精や不育症治療など高度生殖医療を地域に根付かせる役割を担っている。

松田先生は、単に医療技術を提供するだけでなく、心理的ケアや患者同士の交流支援にも力を入れている点が特徴的。

「出会えてよかったと思われる医療」を理念に掲げ、丁寧な説明と温かい診療スタイルに定評。

日本IVF学会の理事として学会活動にも積極的で、近年は妊娠前の健康管理であるプレコンセプションケアの普及にも取り組んでいる。

九州だけにとどまらず、日本における生殖医療発展のオピニオンリーダーの一人であり、医療・心理・地域をつなぐ姿勢が多くの患者から信頼を集めている。

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関連リンク

松田ウイメンズクリニック
https://www.mwc-ivf.jp/

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