キャリアという代償

Cocobaby 編集部
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Cocobaby妊活ナビ編集部 2026年4月7日

今回は30代女性 MKさんのお話。

2024年3月15日。私はプロジェクトリーダーに任命された。

上司から「君に任せたい」と言われて、10年間この会社で働いてきた成果がようやく認められたと思った。

大型プロジェクトのリーダー。これは私のキャリアにとって大きな転機になるはずだった。

同じ月、私は体外受精を始めることにした。36歳。AMH値は年齢相応だが、決して高くはない。キャリアも妊娠も、どちらも待ったなしのタイミングだった。

最初は両立できると思っていた。でも4月に入って、現実の厳しさを思い知った。

通院日は前日か当日の朝に決まる。「明日の午前10時に来てください」という電話が夜にかかってくる。翌日は重要な会議が入っている。

でもキャンセルするわけにはいかない。採卵のタイミングは1日ずれるだけで結果が変わる。

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私はチームメンバーにメールを送った。「申し訳ありません。明日の会議、欠席させてください。体調不良のため」。

嘘をついた。本当のことは言えなかった。

朝8時に病院で内診と採血を済ませて、急いで会社に向かう。10時の会議には何とか間に合った。でもホルモン剤の副作用で頭がボーッとする。吐き気がする。会議の内容が頭に入ってこない。

5月には有給休暇を使い果たした。それでも通院は続く。欠勤扱いになる日が増えた。

6月のある日、上司に呼ばれた。会議室で、上司は慎重に言葉を選びながら言った。

「最近、休みが多いよね。体調が悪いなら無理しないでほしいんだけど、プロジェクトが大事な時期だから……」

私は意を決して打ち明けた。

「実は、不妊治療をしています。通院が必要で、どうしても休まざるを得ない日があるんです」

上司は少し驚いた顔をして、それから言った。

「そうか。制度はあるから使えるものは使ってほしい。でも、今この時期に休まれると、正直プロジェクトが回らない。他のメンバーにも負担がかかってる」

その言葉が胸に刺さった。

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7月、人事から呼び出された。プロジェクトから外されることになった。

表向きは「体調を考慮して」という理由。実質的には降格だった。新しい配属先は総務部の事務作業。10年間積み上げてきたキャリアが、一瞬で崩れた。

8月、私は退職を決意した。

退職届を書きながら、手が震えた。

「一身上の都合により」。そう書くしかなかった。本当は「不妊治療との両立が不可能だったため」と書きたかった。でもそんなこと書けない。

9月30日が最終出社日だった。10年間働いたオフィスを後にする日。ロッカーの荷物を段ボールに詰めながら、涙が溢れた。

「仕事と両立」。そんな綺麗事を何度も聞いた。制度はある。不妊治療休暇も、時短勤務も、制度としては存在する。

でも、実際に使える空気はない。休めば評価は下がる。プロジェクトからは外される。キャリアは止まる。

男性は選ばなくていい。仕事も妊活も、両方できる。でも女性は選ばされる。キャリアか、妊娠か。どちらかを諦めなければならない。

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10月1日、私は無職になった。朝、いつもの時間に目が覚めたが、行くところがなかった。リビングで通帳を開いて、今後の生活費を計算した。夫の収入だけでやっていけるか。治療費は払い続けられるか。

この選択が正しかったのか、まだわからない。いつか「間違ってなかった」と思える日が来るのだろうか。

今はただ、喪失感しかない。キャリアを失った。社会とのつながりを失った。毎日の目的を失った。

でも後戻りはできない。私は子供を授かるために、キャリアを捨てた。この選択を後悔しないために、今は前に進むしかない。

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