2026年10月19日 読者体験談
首都圏に住む30代 Mさんの体験談です。
帰りの電車の中で、スマホで「前進運動精子率 5パーセント 顕微授精」って検索してた。
その日の朝、クリニックで検査結果を告げられて、先生は丁寧に説明してくれた。
通常の体外受精では受精が難しいこと、顕微授精が推奨されること。内容はちゃんと理解できた。
でも隣に座ってた夫の横顔が、ずっと固まったままで、それだけが頭に残ってた。
クリニックを出てすぐ、夫が「ごめん」って言った。
私は「何を言ってるの」って返した。

不妊は二人の問題で、原因がわかったことは前進で、そういうことを言った。
本心ではあった。でも、100パーセントそう思えてたかというと、正直わからない。
電車に揺られながら、この半年のことを考えてた。
アプリで排卵日を管理して、基礎体温を毎朝記録して、夫が疲れてそうでも声をかけて。
あの時間の意味はなんだったんだろうと一瞬思って、でも「必要な過程だった」って自分の中で即座に変換した。
そういう変換作業、最近うまくなってきてる気がする。うまくなってることが良いことなのかどうかは、よくわかんないけど。
夫は翌週から男性不妊専門のクリニックへの通院を始めて、サプリも一緒に選んで取り寄せた。
ただ、担当医に「生活習慣の改善で劇的な改善は見込みにくい」と言われたそうで、その話を聞いた夜は少しぼーっとした。
たばこはまだやめていない。「急にやめる方がストレスになる」という夫の言葉も理解できる。彼自身がどれだけ傷ついてるかも、想像はできる。

それでも、ベランダで煙草を吸う後ろ姿を見るたびに、何かが胸に引っかかる。
怒りとはちょっと違う、悲しみとも違う、うまく言語化できない感情がある。
これから体外受精に進む。自己注射も通院も採卵の痛みも、体を使うのは私だ。
それは仕方ない、そう思ってる。
ただ、「二人の問題」という言葉を、本当に同じ重さで共有できてるかどうかは、今もわからない。
わからないまま進んでいくしかないんだとも思っている。整理がついてないまま、次の診察日がやってくる。

